多文化共生時代の日本語コミュニケーション能力測定試験を目指して
2019年 4月、日本では新しい外国人受け入れの為の新法が整備され、数年後には100万人規模の外国人労働者の来日が予想されています。また一方、日本の高等教育機関で学習する外国人留学生は30万人を超え、さらに海外からの観光客は年間3000万人規模となり、日本人だけで暮らしていた”島国日本”は、大きな変貌を遂げようとしています。
このように日本国内のグローバル化は急速に進んできていますが、外国人とのコミュニケーションの要ともなる、外国人への日本語教育や学習者の日本語能力の判定試験見直しについては、なかなか進まないのが現状です。
ここ数年、「CEFR」という言葉に注目が集まっています。これは、「Common European Framework of Reference for Languages」の略称で、陸続きに多くの国が存在する、従来から多言語・多文化共生の地域であるヨーロッパで、それぞれの文化や言語を尊重し、様々な人々が相互に活発な交流を進めていく為に開発された、復文化主義・復言語主義を基本とする、学習者・教育者共通の考え方です。従来からある、テスト重視の「ALTE」(Association of Language Testers in Europe)が掲げる「各言語試験の標準化」という視点とは一線を画する考え方です。
異なる文化・宗教・言語に起因する過去の苦い経験を踏まえ、人権、民主主義、法の支配を保護し、個々人が平和的に共存できる社会を作るために生まれた考え方なのです。
今後、より多くの外国人が、留学生として、労働者として、観光客として来日します。
彼らとの交流を図り、相互に異なる文化を尊重し、各個人が平和な、そしてすごしやすい社会を築いていくためには、前述 の「CEFR」の考え方に基づいた、コミュニケーション能力を基準とした日本語能力測定試験が求められていると考えます。
従来のような、漢字の習得数や難解な文法を基準とした減点方式の日本語試験ではなく、一人一人を社会で活躍する者(Social Agents)と捉え、様々な領域(domain)におけるコミュニケーション能力を、言語の基礎能力である、読む・聴く・書く・話すの4技能で測定する、総合的なコミュニケーション能力を測定する試験が必要なのです。
これらの考え方に基づき、「日本語コミュニケーション能力測定試験」(Japanese Language Communication Ability Test=JLCAT)は開発されました。
日本に留学される皆さん、日本の企業で活躍される皆さん、日本全国を旅行されるみなさん、日本語を学習する世界中の皆さんに、この「日本語コミュニケーション能力測定試験/JLCAT」をご活用いただければ幸いです。
皆さんの輝かしい前途を願ってやみません。
2020 年 4 月
一般社団法人 国際教育促進協会